2017/11

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 浜野佐知監督の『女が映画を作るとき』(平凡社新書)の出版記念会が、2月16日に新宿住友ビルで行われ、100人前後の人が集まる盛況となったが、わたしはこの日、一冊の単行本を携行するかしないか、間際まで悩み、結局のところ断念した。この夜、わたしは司会進行を命じられていて、たとえこの本の著者が来てくれたにしろ、サインをしてもらうような余裕はないだろうし、司会が自分の役目をないがしろにしてサインをねだっている光景は、相当みっともないに違いないと考えたからだ。
 その本は、小谷真理著『女性状無意識<テクノガイネーシス>−女性SF論序説』(勁草書房・94年刊)で、小谷さんは夫君の巽孝之教授と共に出版記念会に来てくれた。わたしはお二人にスピーチをお願いする際に「94年に出された『女性状無意識』という忘れ難い書物の著者で、すぐれた尾崎翠論も執筆されている」とわたしなりに万感の思いを込めて紹介したが、会場が極度にうるさく、小谷さん本人にも聞こえていなかったことだろう。



 巽教授と小谷さんは「サイボーグ・フェミニズム」の日本への紹介者でもあり、91年に出た同名の訳書『サイボーグ・フェミニズム』(トレヴィル刊)は肩で風を切るカッコ良さだったが、しかしわたしは小谷さんのデビュー作である『女性状無意識』、中でもジェームズ・ティプトリー・ジュニアのエピソードには泣けた。
 68年にデビューしたこのSF作家は「その華麗な文体、ヘミングウェイを思わせるマッチョな作風で」一躍人気者になるが、77年になって、母の死をきっかけに、実はこの「男性作家」が60歳を越える女性のペンネームだったことが暴露され、アメリカの「SF界は大きな衝撃を受けた」という。ラクーナ・シェルドンという女性名でも、フェミニズムSFを発表していた。
「小説作法における、いわゆる男流/女流が約束事として学習されたものに過ぎなかったことーかくしてティプトリーは、自らの存在そのもによって男女の間を解体してしまったのだ。しかもかつてCIAの情報将校をつとめたことのある情報操作のプロであったという、とびきりのオマケつきで」(同書より)
 このエピソード自体、尾崎翠の「こほろぎ嬢」に登場してくる「ふぃおな・まくろおど嬢」と「ゐりあむ・しゃあぷ氏」を思わせるが、当時、直ぐにでもジェームズ・ティプトリー・ジュニアのSFを読もうと思ったくせに、いまだにまったく読んでいない。不徹底である。思うにわたしは、小谷さんのこの著書だけで充足してしまったのだろう。
 浜野監督の出版記念会では、サインを断念したわたしだったが、同じ週の土曜日にお茶の水女子大で行われた小谷さんの講演を含む研究発表会に潜り込み、その後の懇親会で、若干の面識のできた巽教授にお願いして、無事に(?)サインを頂くことができた。長年のこの本のファンとしては、著者を前にすっかり上がってしまい、ドモりながら何か意味の通らないことを口走って、慌てて帰ってきた。出版記念会の会場では普通に呼びかけたりしていたのに、ファン心理というのは可笑しなものである。
(わたしはかつて巽教授の、たしかメルヴィルをめぐる文章の一部をパクッて「薔薇族映画」−ゲイ向けピンク映画−をデッチ上げたことがあったはずだが、それについては口を閉じて、ヒミツにした。しかし、そのネタ本がなんであったか、今いくら頭をひねっても思い出せないのだ。杜撰である)


comment

ヤマザキさん、ありがとう。

妙な連鎖ってあるんだようね。私はちっとも教養のない人だから、数少ない切り札で勝負するという感じがあるのです。それはそれでいいのではないかと思っています。疲れたくないというのも濃厚にあるし、ですね。

私は私でしかない、私以上にはなれないし、なりたくもないのれす。

そういう感じはヤマザキワールドも似ている感じです。

鋭いヤマザキさんの文の切り口のファンです。

  • 河合民子
  • 2005/03/05 1:33 AM

河合さん、コメント有難うございます。「レキオス」の掲示板にすでに書かれていたように、『白鯨』のメルヴィルを「ネルヴァル」と読み違われたようですが、わたしはむしろ、メルヴィル→ネルヴァル→クリステヴァ→『黒い太陽』→「廃嫡者」、という出会い頭の(?)連鎖系が面白く、強い興味を覚えました。「ネルヴァル」は知りませんでしたが、ぜひ『黒い太陽』読んでみます。

河合民子さんは沖縄在住の作家・詩人で、那覇の国際どおりのそばに「レキオス」という沖縄料理の居酒屋を開いています。先週末(2月26日)沖縄女性総合センター「てぃるる」で『百合祭』のビデオ上映があり、その後「レキオス」で美味しい料理と泡盛を、たっぷりと頂きました。河合さんはわたしより10日ぐらい早くブログを始めたのですが、その旺盛な筆力には圧倒されます。
「レキオス」の掲示板
http://6827.teacup.com/showmyn/bbs
河合さんのブログ 「syouwmyns room」
http://navy.ap.teacup.com/showmyn/
「レキオス」のひとえさんのブログ「日々のカケラ」
http://green.ap.teacup.com/hitoe/

きのう三越の長崎展でゲットした「皿うどん」をお昼に食べて、のんびりとしています。去年は古老と共に出かけていって食べたのが塩辛くて大変だったので、今回は材料だけを買ってきました。不味い料理の記憶は強烈ですね。

…ということで、今、ヤマザキ・ワールドを楽しんでいます。面白い!!!

ネルヴァルは未読ですが、クリステヴァが『黒い太陽』という本のなかで彼の「廃嫡者」という詩の分析をしていて印象に残っています。『黒い太陽』の「女性の抑圧のさまざまな形」はど迫力の論文でした。

沖縄はまだ寒いです。おまけに雨。普段なら3月3日は「海開き」なのですが、ちょっと無理かもね。ではまた!!!










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