2018/05

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 たまたま「アクセス解析」を覗いたところ、地味な拙ブログにしては異常なアクセスがあり、該当ページを調べたら、昨年の12月にアップした「残念無念、藤田東吾社長へのエールを引っ込めるの弁」でした。このところ、藤田東吾氏が再び果敢な発言を再開し、心から拍手を送っていたのですが、その流れの中で検索されたのでしょう。
 しかし、意味ありげなタイトルには問題があり、すでに1年近くの時間も経って、いくらシオヤマでも文句を言ってこないでしょうから、原文を再掲載します。10ヶ月前に書いたこの文章を、その後の展開によって手直しする必要を、わたしは全く感じません。それは藤田氏のためにも喜ばしいことだと思われます。なお、原題は「頑張れ、藤田東吾社長! 非時事的な男の色気に関する観察」でした。



 藤田東吾社長は、はたしてハンサムであろうか? 今、もっとも気になる男が、耐震強度偽装問題の渦中にある、検査会社「イーホームズ」の藤田東吾社長であり、彼の微妙にハンサムな顔や、ちょっと、くぐもった声を求めて、ついニュース番組を、あちこち、せわしなく経巡ってしまう男たちが、わたしに限らず、相当数いるようだ。



 例えば、2チャンネルの掲示板の「藤田東吾FC」というスレッドに、盛んに書き込んでいる男たちである。わたしは、このスレッドに初めて出会ったとき、思わず会心の笑みを浮かべてしまった。中を読むと、必ずしも藤田社長支持一辺倒ではなく、自社の検査のズサンさにも関わらず、他社をあげつらって非難することへのキビシイ批判や、告発者を気取って、自らの責任をウヤムヤにしようとしている、といった弾劾まで、数多く書き込まれている。
 しかし、わたしの頬が自然とゆるんでしまうのは、「毎朝、東吾タンのネクタイを、結んであげたいわ」とか「参考人招致の時の、左側上方45度の角度からのカメラが、東吾のベストショットね」といった、女言葉であるにも関わらず、間違いなく男が書き込んでいるに違いないコメント群を目にする時だ。
「このスレッド、カマっぽくない?」という書き込みが端的に示すように、どうやら藤田東吾社長、「オカマ」に人気があるようなのである。「オカマ」は、もちろん差別用語に相違ないが、書き込んでいる当事者が「カマっぽくない?」などと発言しているうえ、「ゲイに人気」では、この場合、ちょっとピンと来ない。わたしたちは、明らかに、このハンサム社長に、なんらかの色気を感じているのだ。
 今日にも、震度5の地震がやってきて、マンションやホテルが倒壊するかもしれない当事者の皆さんには、まことに不謹慎であるが、事情通でもないわたしは、事の真偽を離れ、男の色気の、いかなるものであるか、この際、検討してみたいと思うのだ。



 わたしたちが、いっせいに目をみはったのは、衆議院での、第一回目の参考人招致の、TV中継であることは間違いない。それ以前に、問題が露見した直後、「イーホームズ」が最初の記者会見を開いた時には、誰が社長であるか分からなかったが、いかにもトッチャン坊やの藤田社長が「この偽装は、検査会社でも見抜けるわけがない」と発言し、誰もが「じゃあ、何のために検査機関があるんだ」と反発を覚えたはずだ。えらく生意気そうに見えたのである。
 ところが、参考人招致での、藤田東吾社長には、別人の趣きがあった。もちろん、あの海千山千のメンツの中におけば、若くてインテリ風の藤田社長が、かっこよく見えるのは当然のことだが、単にハンサムなら、同じ参考人として並んでいた、シノケンの若き創業社長のほうが、数段上だろう。しかし彼は、九州の先輩である木村建設に頼って推進してきた事業が、根底から引っくり返り、すっかり憔悴しきっているように見えた。同じ販売主であるヒューザー社長のように、ふてぶてしく開き直ることもできず、ただただ俯いていたのである。
 それに対して、藤田東吾社長は、訥弁ながらも、敢然と、ヒューザー側との会話のやり取りをバラシ、さらには同業最大手の日本ERIで、1年以上も前に偽装がいったん発覚し、それが「隠蔽された」とまで発言した。それはいかにも、自分の会社を守ろうとする行為ではあるが、男たちの「暗黙の了解」、例えば、あからさまな個人攻撃は避けるとか、同業他社に言及する場合は、固有名詞を積極的には挙げないといった、業界(ある種の日本的共同体)のルールを、明白に「掟破り」する言動のように見えた。それを行なう場合は、あくまで「苦渋の選択」の中で行われるべきものなのに、藤田東吾社長は、自分からポンポンと発言したのである。



 しかし、わたしには、彼以外のすべての参考人が、言葉の言い換えによって、逃げ切りを図るなかで、事の経過や、自分や他人の発した言葉に正確であろうと、口調はいささかたどたどしいものの、懸命に努めているように感得されたのだ。まるでドキュメンタリーの未編集フィルムを見るような、興味津々の実況中継であり、さまざまな解釈やストーリーがありうるが、わたしが編集するならば、藤田東吾社長を縦糸にするだろうと思われた。2チャンネルの書き込みが指摘するように、彼の顔の上方、45度からのカメラポジションも素晴らしく、なぜかビンの付近に射してくる光が、どこから来るのか不審に思いつつ、わたしはTVから目を離すことができなかった。
 さっそく、藤田社長によって名指しされた日本ERIは、記者会見を開き、老練そうな社長は、激しい検査会社同士の競争が生んだ、根も葉もない中傷で、告訴を準備していると大見得を切った。ところが翌日、一転して「隠蔽」を認める記者会見を開かざるを得なかったことは、周知の通りである。優秀な人たちが経営しているはずの、業界のトップ企業が、これほど不様な対応するのには、素人のわたしも呆気にとられた。顔だけは威厳ありげな大人だったり、老人だったりするが、内実は子供ばっかりで、日本の企業経営が行なわれているのではないか。
 また、翌日のTV朝日のモーニングショーでは、普段は比較的冷静な渡辺宜嗣アナウンサーが、ものすごい勢いで、藤田東吾社長を、責任転嫁だと非難していた。確かに、だまされた人間も悪いが、それ以上に、だました人間のほうが悪いことは、自明の理である。わたしは、そこに、正義派を気取った、ハンサムな男に対する、「オカマ」にあらざる男たちの、生理的な反発があったのではないかと見ている。



 一方、「藤田東吾FC」に集う男たちは、どう受け取ったか? 
「やっぱり東吾にも、うしろめたいダークな、過失のニオイ。影がないと、つまらないわ。 そこからなんともいえない男の色気がでてくるってものよ。だからクリーンぶらないでね。とーご」
「窮地に立たされて必死な悪人、て設定がまた良いんだわ」
 こうした書き込みには、男の色気に関する独特のアプローチがあり、また時事ネタを、自分たちのコンテクストに引きずり込んで愉しむセンスが、躍動しているように思われる。彼が、見かけよりも年を食った44歳であることや、浪人して入った大学、年の離れた奥さんがいることなども、このスレッドで知った。週刊誌あたりには出ているのかもしれないが、2チャンネラーの、たいした調査力だと敬服した。もちろん、
「なに、この気持ち悪いスレ…藤田なんて一番腹黒い部類の卑怯者じゃん。インチキ検査物件の詐欺的商法で、バカバカ仕事取ってスルーさせて、ボロ儲けしてきた張本人なのに、自分だけ助かろうとしてる」
 といった書き込みもあって、実にバランスが取れているのだ。かつてのイラク人質事件のときの「自己責任」論の大合唱の気色悪さと比べると、こうした意見の対立は、まことに風通しがいい。
 しかし、人の好みはさまざまであって、「東吾タン」に「萌え」る多くのファンの書き込みの他に、シノケン社長に秋波を送るものや、さらには、いかにも悪党づらの木村建設の東京支店長に「萌え」る少数派もいて、わたしはこれらのヴァラエティに呆れ果てながら、そうか、わたしの東吾社長に対する胸騒ぎは「萌え」だったのであるか、と改めて納得したのだった。


 
 藤田東吾社長は、はたして「窮地に立たされて必死な悪人」だろうか。その後の経過を見ると、彼はけっして「悪人」なんかではなく、入り組んだ疑惑の構図のなかで、スケープゴートにされかかり、自分と、自分の会社を守るために、懸命に反撃しているように見える。しかし、その反撃がどこか素人っぽくて、危なっかしいのだ。
 彼は、法律によって定められた検査業務が、どういうものか、TVに出演し、ちょっと鼻にかかった、多少聞き取りにくい口調で、論理的に説明しようとする。しかし、うまく伝わっているようには見えない。自社のHPにも、せっせと書き込み、さらには、早い段階から黒幕を暴露してきた「きっこの日記」という、書き手が誰だか分からないブログにさえ、メールを出して、最初に偽装を見抜いたという設計士への疑惑も、オープンにする。
 数日前にTVで見た藤田東吾社長は、顔がむくんで、言葉も時に空転するようだった。そうとう疲れているようである。さっそく、2チャンネルのFCでは「思ったほどハンサムじゃない。鼻が、でかい」といった意地の悪い書き込みも見られたが、追い詰められて、孤軍奮闘する、悲愴な姿にエールを送る、女言葉の男たちのボルテージもまた、上がっているようだった。
 可笑しいのは、わたしは見ることができなかったが、日本TVの夕方のニュースに出演した藤田東吾社長が、笛吹雅子アナウンサーに、けっこう邪慳にされたらしく、みんなで、しきりに憤っていた。わたしもけっして嫌いなアナウンサーではなかったが、今日から色眼鏡でみることにしよう。



 現在進行形の経済事件の、一方の当事者が、自分の主張や、知りえた事実のすべてを、インターネットで公開し、TVに出演しては、難しい法律問題を、何とか誰でも分かるように概説しようとして、多くの場合、冷ややかな視線を浴びている。これは、しかし、そうとう珍しい光景ではなかろうか。ヒューザー社長は、すべてを明るみに出そうとする藤田東吾社長に対して、恨み骨髄であり、来るべき新会社を「建築確認検査被害者同盟」みたいな名前にしたいと発言するなど、標的として狙い定めているようだ。
 すでに、元請けの設計会社の社長が、不審な死を遂げ、まさか藤田社長もまた闇に葬られることはあるまいと思われるが、彼の死に物狂いの努力は、いっさいムダに終わるかもしれず、そうとう困難な、これからの人生が予想される。絶対的な窮地に陥りながら、目の前の敵と、精一杯戦いつつ、時に、痛々しかったり、どこか間抜けに見えたり、無防備な姿を、ありのまま、さらけ出している藤田東吾社長。わたしたちは、そんな彼に、見かけ上のハンサムを越えたハンサム性や、ひどくセクシーなものを感じてしまうのだ。頑張れ、東吾社長!

*『レモンクラブ』05年12月の原稿に、大幅加筆しました。


comment

建つ三介さま
 特に「封印」していたのではないのですが、たまたまアクセス解析を見て、どうも前回のタイトルが意味ありげで良くないと思い、忘れていた記事を引っ張り出してきました。
 トラックバック有り難うございます。技術的なことはさっぱり分からないわたしですが、「いわいわブレーク」の解説やスタンスは、たいへん有益です。これからも拝読するのを楽しみにしています。

こんにちは、くにのりさん。
やっと待ちに待った、この記事が解禁されましたか。
嬉しい。
耐震事件とは全く関係ないけど、藤田東吾氏の余り世間ずれしてない・政治屋かぶれしてそうにない魅力や、それにウキウキする「怪しい?」人々の生態・社会風俗が浮き上がることによって、糞詰まりの政治状況の深部の蠢きが
ボーと見えてくるような気がします・・。
日テレの穴の評価も変えさせる「妖気」があるということですかねえ・・。

PS
硬い内容のTB晴らせてもらいました。

  • 建つ三介
  • 2006/10/28 2:51 PM









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藤田東吾氏、復活

構造偽装か隠蔽か

  • いわいわブレーク
  • 2006/10/28 2:35 PM