2017/03

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 目下、雪の仙台にいる。岡山から帰って、一日おいて移動してきた。浜野組の次回作のプロジェクトが動き出しかけている。具体化したら、仙台市、宮城県、さらには広く東北の皆さんのご協力をお願いしたい。
 さて、妙なタイトルをつけてしまったが、けっして岡山映画祭が怪しい人物たちの祝祭であるなどと言いたい訳ではない。浜野佐知監督とわたしが参加したのは、11月3日から始まって週末ごとに上映し、12月2日に終わるこの映画祭の、中盤の2日に過ぎない。しかし、わたしの脳裏には飲んだり喋ったりしたオカヤマの怪人、変人たちの影がちらついて離れないのだ。



 写真は岡山市デジタルミュージアム。この映画祭は、県立美術館ホールや市オリエント美術館などいくつもの会場で上映されるが『こほろぎ嬢』『百合祭』はデジタルミュージアムのホールで上映された。岡山駅前に数年前にできたばかりの新しい施設で、ホールはこじんまりしているが、階段式になっていて観やすい。
 今回はデジタルミュージアムに16ミリ映写機を持ち込み、フィルムでの上映となった。映写は岡山映画鑑賞会の真田明彦代表が担当したが、わたしはこの上映が、鑑賞会の例会も兼ねていることを当日知った。一人でも多くの観客を集めようと尽力してくれたのだ。また、岡山市職員労働組合女性部が、浜野監督と『百合祭』の招聘に積極的に動いてくれた。岡山映画祭のプログラムのなかでは、かなり異色の浜野監督作品2作品上映は、こうした団体の垣根を越えた協力によって実現したのである。



 岡山映画祭の小川孝雄代表。この映画祭の特色は、わたしの個人的な印象だが、若手を中心とした作家主義とオカヤマ発信にあるのではないか。映画祭メンバーが毎月貯金して映画の製作費を捻出した『夢幻琉球・つるヘンリー』(高嶺剛監督。98年)の「市民プロデューサーシステム」は、世に馴染まない芸術家をバックアップするこの映画祭の金字塔といえる。
 地元の若い映像作家の発掘にも積極的に取り組み、いっけん温厚な小川代表の周囲には、青き映画青年や映画少女がキラ星のごとく集まっている。しかし、温厚なだけで映画祭を長年率いていくことはできないだろう。学生時代にはドキュメンタリーの制作集団に属し、就職に際してどちらの方向に行くか大いに迷ったと聞いたことがあるが、飲むにつれ、映画制作者特有の、世界をぶち壊してやろうというような不敵な面構えが浮上してくる。



 浜野監督は芸術派でもなければ、岡山とも直接的な縁はない。しかし、99年に福岡で開かれた映画大学で真田さんとお会いし、2000年の岡山市芸術祭の「地域映像祭」で小川さんにお会いした。『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』の上映を介して、この岡山の自主上映界の両巨頭と出会ったことが、01年の『百合祭』岡山自主ロードショーにつながっている。
 真田さんと小川さんは、第一回の「尾崎翠フォーラムin鳥取」にも参加してくれた。昨年の『こほろぎ嬢』鳥取ロードショーでは映写機に問題が勃発し、わたしは中国山脈を越えた向こうの真田さんに電話で泣きついた。結局、岩美町と鳥取市の上映会に、真田さんが映写機を車に積んで来てくれた。窮地に陥ったときに助けの手を差し伸べてくれる人こそ、真に友人と呼べると思った。(この「窮地」にはプライベートな問題は含まない。私生活で助けてもらったら、友人でなくなるのでは?)



『百合祭』の自主ロードショーの時には、岡山と縁の深い吉行和子さんに来てもらい、浜野監督とトークして頂いた。吉行家のルーツが岡山にある。その時の司会の右遠さん(岡山映画鑑賞会)が、今回の『こほろぎ嬢』上映の前に浜野監督の紹介をしてくれた。かつて右遠さんや三上さんなど鑑賞会の女性スタッフと、夏の暑い日に車で地元マスコミを回ったりしたのも、今となっては懐かしい思い出だ。
 


 この映画祭のもう一つの特色に、製作側と観客との積極的な交流がある。1日3回上映した『こほろぎ嬢』でも、毎回30分近くの浜野監督トークが行われたが、それでも物足りない人はロビーで積極的に話しかけていた。映画のパンフや自著『女が映画を作るとき』(平凡社新書)を買ってくれた人にサインしながら、談笑する浜野監督。



『百合祭』上映前に、岡山映画鑑賞会と共に共催の岡山市職員労働組合女性部の方が挨拶してくれた。全国的に退潮が伝えられる労組の、それも女性部が、今回『百合祭』と浜野監督を支援してくれたことには心から感激した。これこそ草の根のシスターフッドだと思った。夜には、浜野監督を囲む会も開いて頂き、監督のピンク映画を観る会も開きたいという声もあがった。
 わたしは『百合祭』ロードショーの時の打ち上げで、市職労の女性から生活保護受給世帯の様子をチェックに行かなければならない仕事が、どれほどツライかという話を聞き、記憶に刻印されている。そういう厳しい仕事に従事している方々が『百合祭』を支持してくれるところにこそ、この映画の名誉がある。



『百合祭』上映の後には、1時間ほどの浜野監督講演があったが、そうした経緯もあってか、監督さん絶好調。延々と楽しそうに喋り続け、わたしも何か話せと水を向けられた時には、もう制限時間ぎりぎり。気が気でないわたしは、何かまとまりのないことを呟いて終わってしまった。質疑応答も予定されていたが、それは結局ロビーで。
 こちらから出品したり宣伝したりしないのに、ひとりで世界へ旅立っていった『百合祭』は偉大な映画だった。時に『こほろぎ嬢』を語る浜野監督の口調が苦しげになるのは、なかなか理解されない現状を反映しているのだろう。



 時に小川代表も、こういう表情を見せることがある。といっても、協力プロデューサーを務めた『また、ゆく、みち』が四国のハンセン氏病患者をドキュメントした作品なので、その舞台挨拶でのこの表情も、当然といえば当然かも。



 事務局長の大西一光くんは、この日はビデオで記録撮り。それ以外にもDVDの映写を担当するなど大忙しだが、今回出品作の『映画の記憶 第2部』の監督であり、カメラマンでもある。映画祭の期間中、機材を車に積んで車中泊することもあり「あらゆる映画祭で、車で寝泊りする事務局長はウチぐらい」と豪語、いや悲しんでいるように見えた。
 なお、『映画の記憶』のインタビュアー中原省五氏は、東京上映でアップリンクで会った時には、生真面目に見えたが、今回、真に「怪人」と呼ぶべき人物であることを知った。酒を飲むごとに、眼に変態的な輝きが増し、気色悪いことこの上ないのだが、悪いことに変態や奇人変人に会うと、わたしはすっかり嬉しくなってしまうのだ。



 17日に観ることができた岡山作品『海より上 屋上より下』の安井祥二監督(左)と出演者のおふたり。安井監督はまだ二十代の若さだが、それだけに家族に痛めつけられる孤独な高校生男女の、ひりひりするような魂の痛みを描くことができたのだろう。
 この日の打ち上げでは、映画祭のプレ企画として上映されたアニメ作品『ぼくのまち』の中村智道監督にも会った。17分の作品に2年間精魂傾け、精神的にも変になったと語る彼も二十代。モノローグの多い怪人物と思ったが、翌日、小さな再生機で作品を見せてもらったら、これが素晴らしい! 生まれたばかりの赤ん坊の見る、これから生きていくだろう世界を予見した生々流転の夢といった趣きだ。イメージフォーラムで賞を受け、バンクーバー映画祭に招待されたのも頷ける。



 撤収直前に、岡山映画祭、岡山映画鑑賞会、市職労女性部の皆さんと記念撮影。どうも有り難う!




 デジタルミュージアムの夜景。NHKと同居している。



 ここからはわたしの時間だ。行きつけの(?)70年代バー「コマンド」は、路面電車&バス停「城下(しろした)」下車、表町商店街という通りの二階にある。この電飾看板はいつから使われているのだろう。 
 この日の上映会には、岡山山中深くからマイミクの「はなみ」さんが来てくれたが、自宅に木工施設や畑を持つこの怪女が、かつて「コマンド」に通ったことがあると聞き、ここでもビックリ。顔をあわせるなり、当初「コンバット」と表記したのは「コマンド」の間違いでないかと指摘されたが、怪人たちの集まる場所は、どこかでつながっているものだ。



 LPレコードの山をバックに怪人マスター。小川さんと高校で同学年で、バンドをやっていたらしい。『百合祭』を観に来てくれたのは、どうやらミッキーさん目当てだったようだ。今回は上映会場に現れなかったが、「その代わり」といってミッキーさんの77年のLPのコピーをくれた。ほかにビートルズ、エディット・ピアフ、そしてなぜか藤岡藤巻という知らないバンドのコピーも入っていた。実に嬉しい。さっそくiPodに入れた。



 これがミッキーさん77年発表のLP。「ミッキーカーチス&ポーカーフェイス」とクレジットされている。


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三介さま
 せっかく褒めて(?)頂いたのに、南会津の実家で植物の冬支度をしていたため、間が空いてしまいました。何もいきなりブログを再開したわけではなく、<mixi>で書いていた日記のようなものをブログに連動させただけなんですね。三介さんは<mixi>はおやりになってるのでしょうか?
 中野重治の「素朴ということ」読んだことありません。今度読んでみます。

おお、すごい。こんなに頻繁に更新してはるとは。
こんばんは。kuninoriさん。
しかも裏方さんを、これだけ大事に紹介されているところ、
中野重治氏の『素朴ということ』を彷彿とさせますね。
時間が許す限り、書いてくださいね。
欠かさず必ず読みますから。
よろしくお願いします。

はじめまして。

11月21日の日記で岡山映画祭を紹介し、イベント情報を調べていて訪問しました。

本家のイベント検索サイトのアットサインでは、誰でもイベント情報を告知できます。
コンサート・展示会・フェア・ワークショップ・講演会等何でも紹介できますので、ぜひ御活用下さい。

ブログTOPからもリンクしていますが、下記から直接でもどうぞ。

http://atsign.jp/

ブログはこちらです。

http://plaza.rakuten.co.jp/atsignyu/










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