2018/09

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「ヤマザキクニノリって、ピンク映画マニアには絶大な不人気監督なんだけど」とわたしが言ったら、閉館が決まった大宮オークラ劇場の佐々木支配人はキッパリ言い切った、「私が好きなんです」。こういう人には永遠に支配人でいてもらいたいが、残念ながら映画館自体がなくなる。閉館を前に4人のピンク映画監督の特集上映が企画され、ヤマザキ、すなわち、わたしもまた、支配人の一存で加わることになった。2月3日(日)が国沢実、9日(土)がわたし山崎邦紀、10日(日)が加藤義一、17日(日)が浜野佐知。それぞれ監督自選の3本が上映され、監督および女優の舞台挨拶も行われる。
 国沢氏にはマニアックなファンがいそうだし、加藤氏は理屈ぬきで楽しめそう、浜野監督には強力な応援団がついている。わたしには、さて、不人気以外に何がある? なにもない。いや、そうだ、屁理屈がある…と自分で言ってしまっては、自縄自縛だが、しかし誰がわたしのピンク映画を観に、大宮までやって来るのだろう。この劇場は43年前に洋画上映館としてスタートしたというだけあって、やたら広々としているのだ。客席は実に145。屁理屈を観に、ピンク映画館にやってくるような人種がそうそういるわけがない。何かうら寂しい上映会の光景が目に浮かぶようだ。



 わたしは何故に不人気であるか。推量するところ、観念的である、理屈っぽく生硬なセリフが続く、登場するのが変態(フェチ)ばかりだ、人間が描けていない、ドラマ的盛り上がりに欠ける、映画的な感動がない、毎回撮影する場所や役者が同じで、飽きる…とまあ、こんなところだろう。列挙しながら思い出したのだが、かつてレオナルド・ダ・ビンチのゲイ説をめぐって、フロイトや花田清輝、それに海外の新しい研究成果、芭蕉ゲイ説などを引用しながら、山の中でえんえんとディスカッションする「薔薇族映画」を撮ったことがあった。そのエンドロールで、役者やスタッフがクレジットされるなか、予想される批判を先取りして役者に叫ばせた。曰く、ふざけるな! このいい加減な終わり方は何だ! これが映画か! 田舎のインテリ気取り! 人間が描けていねえんだよ! こんなヘボ監督に映画撮らせるな! 
 まあ、ほぼ前述の欠点と同じような内容を、役者の全員が60秒ぐらいの間、入れ替わり立ち代わり叫ぶ。思いつきでアフレコで付け加えたのだが、しかし役者たちに目の前で悪口雑言を並べられると、いくら自分で書いた原稿とはいっても、そうとうムッと来るものだね。中でも熱を入れて野次を飛ばしていた柳東史くんに、つい「えらくマジにヘボ監督と叫んでいたじゃないか。本気だったろう」とイヤミを言ったら、「監督が言えって言うからじゃないですか」と抗議されてしまった。役者の迫真のセリフに、ドジな作者のわたしがガックリくる一幕だった。(今回の上映会、本当は薔薇族を一本ぐらい入れたかったのだが、劇場がピンク館なので無理とのこと。なお、大宮オークラの一階にある小劇場は、薔薇の専門館だ)
 自作の欠点をあげつらい、いよいよ墓穴を掘っているような気配だが、実はこれには深謀遠慮がある。これらの欠点は盾の片面であり、もう片面から見ると、欠点が、あらら不思議、別種の魅力となって燦然と輝きだす…というような前置きで、セクシュアリティを専門的に探求するジャンル映画としてのピンク映画について、一度は書き連ねてみたのだが、ピンク映画論としてならともかく、拙作に即して語ると、どうも言いわけじみて後味が悪いのだ。ここはひとつ、欠陥だらけの珍品であることを引き受けて、こんなヘタクソなピンク映画を見る機会は滅多にない! とアピールした方が、むしろ宣伝効果があるのではないか。屁理屈映画を強調するより、まだ、ましのような気がする。



 実は、こんなわたしのピンク映画でも、過去に一度だけ上映会が行われた。映画批評の金字塔にして異端の奇書『興行師たちの映画史〜エクスプロイテーション・フィルム全史』(青土社)の著者、柳下毅一郎氏が司会して、日本のデヴィッド・リンチ批評の導師、滝本誠氏がゲストという、わたしにはあまりにも豪華すぎる上映会だったが、肝心のわたしがさっぱり盛り上がらない、むしろ盛り下げることに終始する陰々滅々たる語り手で、お二人にはまことに申し訳ないことをした。やはり座談は浜野監督のような陽性の語り手でないと愉しくないね。(『興行師たちの映画史』の中の、トッド・ブラウニングが撮影現場で、いつも下半身欠損のフリークスを自分の脇の特別な椅子に座らせていたというような記述を、わたしはどれほど幸せな気持ちで思い返したことだろう。こちらこそ映画史の正統だ)。
http://www.ltokyo.com/yanasita/works/exploitation.html
 この時上映してもらった2本、ちょっと高級なセックス・サイボーグが人間化したおかげで、人生の意味に煩悶し、セックスも弱くなり、人間とロボットの間で自滅する映画や、自分は路上の郵便ポストだ、存在することを誰にも意識されないと観ずる冴えない初老の男に訪れた一幕の夢物語も、いずれも愛着があるが、今回は別の作品を選んでみた。手元にいちおう自作の保存用ビデオがあるのだが、あんまり遡ってもフィルムがあるかどうか分からず、例えば犬のモノローグで全編通す変な映画『バクステール』を痴漢映画に仕立て、荒木太郎君にモノローグを語らせた作品など、当時住んでいた青梅で撮影したこともあって思い出深いのだが、タイトルも忘れてしまった。



 ビデオをアレコレ見返す時間もないので、まずピックアップしたのが「アナル・バイオリン」や「アナル・バース」(お尻から生まれ直す)という珍奇な小道具や概念を主題にしたお尻フェチ映画『愛人秘書・美尻蜜まみれ』(02年)。ゆで卵にバイオリンの弦をつなぎ、それをアナルに挿入して、弦を張って弓で弾くアナル・バイオリンの撮影には苦労した。弦が緩み、たわんでいるシーンもあって、必ずしも成功していないが、決して少なくはないだろうお尻フェチ諸君には素敵なプレゼントであろうと確信する。
 次に、OP映画の島田さんから「人に移さないと治らないウィルスをテーマにできないだろうか」という提案を受けて作った『淫女乱舞・バトルどワイセツ』(01年)。エイズを治療する対抗ウィルスを作ったつもりが、10日以内にセックスで他人に移さないと死んでしまう変なウィルスができてしまい、間抜けで命がけのセックスがチェーンのようにつながっていく。女装のキャンディ・ミルキーさんが素顔で登場するあたり、かなりタルイのだが、このウィルスのチェーンを断ち切るラストのアイディアが気に入ってるのと、佐々木基子さんに初めて出会った作品としてセレクトした。この映画で「不幸なストリッパー」を演じた基子さんは「さらに不幸なストリッパー」など固有名詞のない役を続けて演じてもらい、それ以降わたしの作品のバックボーンとなっている。
 最後の一本が決まらなかったのだが、先日のジュリーのコンサートで、ビートルズの「ノーウェアマン」が歌われたのを思い出し『視線ストーカー・わいせつ覗き』(01年)のビデオを見てみた。ノーウェアマンと呼ばれる主人公の話なのだが、いや、これが実に面白かったのだね。自作ではあるが、例によって一部のシーンしか覚えていないので、けっこう第三者的に新鮮な目で観られる。主人公の盗撮男は、純粋視線と化しナマ身を忌避するが、一人の女に惹かれ、ナマ身の世界で破綻するストーリー。ここにはわたしの素直な初心があるのではないだろうか。主人公の柳東史君が際立ってハンサムで、対立する石川雄也君が実に色っぽいのも嬉しい。

 この3本の上映と舞台挨拶は、以下のようなスケジュールとなる。
●2月9日(土)
PM2:00〜=淫女乱舞 バトルどワイセツ(2001年・佐々木基子・里見瑤子)
PM3:00〜=舞台挨拶
PM3:30〜=愛人秘書 美尻蜜まみれ(2002年・岩下由里香・佐々木基子・風間今日子)
PM4:30〜=視線ストーカー わいせつ覗き(2001年・望月ねね・鏡麗子・風間今日子)
 なお、ここで朗報がある。舞台挨拶に佐々木基子さんが来てくれるというのだ。わたしのピンク映画の主演女優である基子さんだが、日常的な付き合いはまったくない。こういう機会に改めて語り合うのも意義があるのではないか。

 一応、浜野監督の方のスケジュールも紹介しておこう。
●2月17日(日)
PM2:00〜=桃尻姉妹 恥毛の香り(2005年・北川明花、北川絵美)
PM3:00〜=舞台挨拶(浜野監督+北川明花)
PM3:30〜=巨乳DOLL わいせつ飼育(2006年・綾乃梓)
PM4:30〜=SEX診断 やわらかな快感(2008年・田中繭子)
 浜野監督の強い要望で、わたしの日も浜野監督の日も、特別に女性専用席を用意してもらうことになった。女性がピンク映画館でピンク映画を観る機会は、ほとんど皆無と思われるが、今回は安心してピンク映画なるものを鑑賞できる。また、料金は通常1500円だが、男女問わず1000円の特別料金になる(ピンク映画館は、普通の映画館と違って入れ替え無しなので、一度入場したら何本見ても、この日は1000円)。



 両日とも、上映後に打ち上げを行うが、わたしにはひとつの凝ったプランがあった。大衆食堂の詩人、遠藤哲夫氏(通称エンテツさん)が自身のブログで「居酒屋食堂」として絶賛している店が、大宮駅東口の駅前にある。先日、浜野監督とロケハン(?)に大宮オークラ劇場を訪れた際に、その「いずみや本店」と「いづみや第二支店」を覗き、支店のほうでアジフライ定食を食べながらビールを飲んだ。なるほどエンテツ大兄のご一党のようなオッチャンたちが、昼間から酒を飲んで大声で喋っているし、注文に応える妙にノリのいいお姐さんたちとのやり取りを耳にしていると、どこか遠い過去に置き忘れてきた場所にタイムスリップしたような既視感が、ひたひたと押し寄せてくる。もっとも浜野監督はあまりのモウモウたるタバコに辟易して、浜野組の打ち上げは劇場の近くの居酒屋でやるそうだ。
 駅前のいづみやで打ち上げするプランを佐々木支配人に話したら、怪訝そうな表情で「よそから来た人たちが哀しくありませんか」と言われてしまった。なるほど地元の人にとっては、確かに面白がって打ち上げをやるような店ではないだろうし、参加してくれるメンバーにもよるが、おそらくは夕方から満杯になるだろうオッチャンたちの喧騒の中で打ち上げは可能だろうか。エンテツさんに相談してみよう。
*エンテツさんの「居酒屋食堂考」
http://homepage2.nifty.com/entetsu/s/izumiya_1.htm

 なお、今回の大宮オークラ劇場の閉館は、普通に考えるようなピンク映画の観客が減って、採算が取れなくなったからではないという。地主が、この大宮駅に程近い商業地をもっと有効利用したいらしい。実際に劇場に入ると、2階のピンク映画館も、一階の薔薇専門の小劇場も、けっこうのお客が入っている。これまで薔薇族に力こぶを入れてきたわたしなどは、小劇場にたむろするお客さんたちが、こちらに独特の視線を飛ばしてくると、何だか嬉しくなってしまうのだ。ピンク映画館が埼玉県から消えるのも寂しいが、上野の世界傑作劇場、横浜の光音座(ここもピンク館と併設)と並ぶ、関東の三大薔薇族館のひとつが消滅するのは、薔薇族監督として無念の限りである。
●大宮オークラ劇場(JR大宮駅東口下車徒歩5分)地図
http://www.eigaseikatu.com/theater/t-1000631


comment

三介さま
 そうなんです。実はこっちの方が本職なんです…などと言いつつ、実は自分の本職が何であるか、この年になっても分からないのですね。困ったものです。サブプライムって、最初何が問題なのかさっぱり分からなかったのですが、最近になって朧げに分かったような気になっています。しかし、頭の抜群にいい人たちが集まって、後から考えると絵に描いたような失敗をどうしてするのか、そこのところがもうひとつ分かりません。

こんばんは、KUNINORIさん。色んな映画の監督もされていたんですか、脚本だけじゃあ、なくて。
>10日以内にセックスで他人に移さないと死んでしまう変なウィルスができてしまい、間抜けで命がけのセックスがチェーンのようにつながっていく。

これってサブプラ不況連鎖に悩む世界経済の『ババ』掴ませたい願望と似てますね。
『モロ・ライン』とか言ってみたりします。

mamikoさま
 超人的にお忙しいのは承知していますので、無理かなとは思っていたのです。やみぃさんはお酒を飲まないのに、打ち上げに参加してくれました。mamikoさんとお話して頂ければ、また愉しい出会いがあったように思います。次の機会を楽しみに。

結局ドタキャンですみませんでした。やみぃさんもいらしてたんですねー。うわーん。会いたかったです〜。また別枠で企画を!!

  • mamiko
  • 2008/02/11 11:57 PM

やみぃ様
 有り難うございます。しかし、来て頂けるとなると、今度はひどく失望させてしまうのではないかというオソレが…。首を洗ってお待ちしています。

9日行けることになりました。(決定!)
グズですみません。楽しみにしています。(*⌒―⌒*)♪

エンテツさま
 ピンク映画にいづみ屋はマッチしすぎ? そうかもしれません。なるほど東洋片岡的でもあります。打ち上げというより、大兄が書かれたように、ピンク映画&飲み会でよいのではないでしょうか。
 シオヤマは来ると言ってました。時間を問い合わせてきたのですが「お前の映画3本観るのはどうもなあ。そうか、ピンク映画は1本1時間か。俺のときに来てくれたから行くようにするよ」とブツクサ言ってました。「俺のとき」というのは『東京の暴れん坊』(右文書院)が発行されたときの、内澤旬子さんとの公開対談のことです。なんでも計算づくにしたい口ぶりですが、年を食って案外親切になりました。

おれのブログにもコメントいただきありがとうございます。なんだかサーバーの不具合か返信がアップできないので、おなじ内容をこちらに書き込みさせてもらいます。

ヤマザキさんのブログを見て、発作的に告知しちゃいました。おれの関係者は、どーせ大宮まで来るならいづみやにも行きたいというのが多かろうと思って書いたのですが、勝手に打上げ会場を決めたようなかっこうになってすみません。

あるいは、いづみやにピンク映画というのは、おれの本に東陽片岡さんのイラストのように、マッチしすぎかもしれません。シオヤマ本にハヤシ画伯ぐらいの感じがよかったら、大宮には人数が入れる居酒屋が、けっこうありますから、当日の成り行きでなんとでもなるでしょう。

イチオウいづみやには、今日行って店長と相談するつもりだったけど、雪でくじけたので、明日にでも行ってアチラの都合も聞いておきます。

こんどのピンク新作に没頭ボッキ奮闘していてください。9日、たのしみしています。シオヤマさんとも会えるとうれしいのですが。

おたか様
 まことに残念です。いづみやが好きだという女性が現れたら、エンテツ氏、狂喜乱舞したことでしょう。「人を愚痴っぽくさせる魔術」…何かボンクラ監督をして悪酔いさせるような気がしてきました。自戒せねば。

mamikoさま
 いくらなんでも2週続けて大宮というのは無理があります。お忙しいなか申し訳ありません。来て頂ければ嬉しいですが、無理しないでください。なお、例の「旧暦ピンク」の企画、明後日から撮影の新作には間に合いませんでしたが、諦めたわけではありません。

私は逆に9日は、仕事さえあがれば(がんばる)行けると思うのですが、17日のほうがバッティング気味、、。なんとかしたいものです。

  • mamiko
  • 2008/02/03 11:50 AM

kuninoriさんの9日、出張が入ってしまい、大いに残念です。
「いづみや」、出張帰りに利用したことがあります。私は好きですけど、打ち上げにはどうなんでしょうねえ(笑)。あの空間には、なぜか人を愚痴っぽくさせる、そんな魔力があるような気がします(笑)

  • おたか
  • 2008/02/03 11:16 AM

エンテツ大兄
 携帯のコメディサイトの予告編見ました。大兄の声が良いですね。なかなかの役者ぶりで、西のモンティ・パイソンの向こうを張る東のエンテツ! 「雲のうえ」から「マイコメ」と乗りに乗っているご様子で、ピンク映画の上映会などというシブイ催しで煩わせるのは遠慮しようと思っていたのですが、早速読んでいただいた上、参加までしてもらえるとは感激です。先ほど大兄ブログを拝見したところ、拙作を見ていづみやで飲もう! という呼びかけまでしていただいたのは、『こほろぎ嬢』のときに「宣伝は下手なくせに、客の入りには一喜一憂している」と見事に喝破されたわたしを応援してくださったのでしょうか。いづみやで打ち上げしようかと思案しているといったら、エンテツさんに相談してみろと言ったのは『東京の暴れん坊』シオヤマでした。参加人数がはっきりしないのが難点ですが、ともかく大兄呼びかけのごとく、いづみやで打ち上げやりましょう。
 なお、このコメントを呼んでくださった方にも大兄ブログを見てもらうため、アドレスを記しておきます。
http://enmeshi.way-nifty.com/meshi/

おれも行きます。

打上げ、何人ぐらいになるかによりますが、大勢のばあいは、いづみやなら第二支店のほうがよいと思います。二階を借りられるとベストだと思いますが、明日飲みに行って聞いておきましょう。明日じゃなくて、もう今日か。

  • エンテツ
  • 2008/02/03 12:33 AM









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