2018/05

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

<< >>




 5月のGWの真っ最中に、上野オークラ劇場で「OP映画祭り2008」というイベントが行われ、3日(土)にわたしのピンク映画の上映と舞台挨拶が行われる。今回は2月の大宮オークラの閉館興行のような監督特集ではなく、OP映画(オークラ・ピンクの略ね)で撮っている監督9人を集め、監督自身が自作の中から1本を選び、1日3人の監督作品上映+舞台挨拶という構成だ。舞台挨拶は3日〜5日の3日間だが、その前後に映画だけの上映も行われる。
 当初、浜野佐知監督もラインナップに入っていたのだが、大宮のように女性専用席を作ることが出来ないと知って参加を取りやめた。(専用席がなくても、女性のお客さんには気をつかいますので、ご心配なく)
 舞台挨拶では、監督とともに、出演している女優さん、あるいは監督お気に入りの女優さんが登壇するが、わたしは大宮と同じく、佐々木基子さんにお願いした。今回選んだ作品は10年近く前のもので、基子さんは出演していないのだが、わたしにとっての主演女優なのである。
 3日は、関根和美監督と加藤義一監督が一緒で、女優は倖田李梨さん、村上里沙さん。午後3時から舞台挨拶が始まり、その直後の3時40分から拙作『変態奥様 びしょ濡れ肉襦袢』が上映される。かつて『和服夫人の身悶え ソフトSM篇』というタイトルで公開されたものだ。
 4時40分に上映が終わるので、拙作を観に来ていただける方があれば、その後大宮のように打ち上げを行いたい。
●OP映画HP
http://www.okura-movie.co.jp/op/info/index.html



 とっくに分かっていたイベントなのだが、このところ老母の会津若松での入院と東京近郊の病院への転院、秋に行われる尾崎翠シンポジウムの実行委員会などで、自室でのんびりブログを綴るような余裕がなかった。さらに浜野組の新作ピンクの撮影もあり、わたしも現場スチールと飯炊き、食器洗いに追われた。
 浜野組の撮影は、初日の夜から監督が高熱を発し、なかなか大変なものだったが、小山田キャメラマンをはじめとする浜野組の面々の力によって無事終了。監督は翌日から病院行きとなった。
 今回、助監督志望の若い女性二人が現場スタッフとして参加し、旦々ギャルズと呼ばれていた。わたしも食器洗いを手伝ってもらう。セカンドの助監督も女性で、顔ぶれはフェミニンな現場であったが、それをぶち壊していたのが、いつもと変わらない浜野監督の怒声。映画監督ではなく、工事の現場監督ではないかと錯覚させる、あの怒鳴り散らす声があってこその浜野組だ。
 40度の熱があった2日目はさすがにトーンダウンしたが、本人はその日の記憶が飛んでいるとか。高熱のなか、無意識で撮ったカラミの出来のほどは?



 写真は、3月に会津若松の病院に泊り込んでいたとき、早朝5時半頃に目撃した朝火事。最初は空調の蒸気だろうと眺めていたのだが、どんどん煙が大きくなり、そのうち消防車の赤いランプも点滅するようになって火事だと分かった。バックの山は磐梯山。高校時代まで何気なく眺めていた山だが、改めて見直すと富士山のような一般向けと違って(富士山マニアの浜野監督が怒るか?)孤高の精神を感じる。



 今回、自作の中からどれを選ぶか、まったく当てはなかった。これまでの数少ない拙作の特集上映、アップリンクや大宮オークラで上映した作品以外のものを選ぼうと思い、何本か保存用のビデオをチラチラ見たのだが、これはどうかと思った作品がまったくつまらないのですね。駄作愚作の山。
 ウンザリしていたら、まったく期待していなかった、自分の記憶でも忘れかけていた『和服夫人の身悶え ソフトSM篇』(旧題)に思わず目を奪われた。出来が良いというわけではない。例によって完成度は低いのだが、実に好き放題やってる映画で、こんなことが許されるのかと、我ながら呟いてしまった。これでは初期荒木太郎を批判できないではないか?
 ストーリーは、あやしげな俳句結社をめぐるもの。その頃読んだ精神病理学者の春日武彦氏の著作で「カプグラ症候群」というのを知り、ひどく興味をそそられた。自分の周囲の人間は、みんな中身が入れ替わった偽者だと思いこむ妄想で、それをそのまま劇中に取り入れている。
 一方、当時ピンク映のマニア誌『PG』の諸君と小さな論争があり、浜野監督とわたしの旦々舎ピンクは、結局セックスを売り物にしたカラミ映画(正確な表現は忘れた。多分そのようなこと)ではないかという論難があった。それに対し、限定された狭いジャンルゆえの豊かさについて、シチュエーションを変えながらも、これまた劇中で論じている。「性的事象をめぐる、ささやかな思考実験」というのが、当時も今も変わらぬピンク映画のわたしの定義であり、その意味では個人的なピンク映画論ともなっている。



 さらに、青少年のころ読んだ坂口安吾のファルス(笑劇)論とその実作「風博士」や「木枯らしの酒蔵から」を、あからさまに流用し、ヘタクソに真似しているのには参った。
 では、当初のタイトルとなったSMについてはどうかといえば、これは『性現象事典』で読んだ「くすぐり責め(ティックリング)」の項の記述、哲学者のスピノザが隠れたSM愛好家で、彼の愛の定義「愛とはくすぐりであり、これによって思慕の情を伝えるのである」に依拠し、その言葉どおりに女体をチョコチョコくすぐっている。くすぐられたヒロインは当然笑っていて、これではたしてピンク映画といえるのか、我ながら首を傾げてしまった。
 まあ、事典や本からピンク映画をでっちあげる、わたしの作り方の典型といえるだろう。その頃のわたしは(今でも似たようなものだが)浜野監督の付録のように扱われていて、評価の対象外であったが、わたしはわたしで、誰にも理解されなくて結構、自分の好きなものを作るぞ、というサビシイ意気込みに満ちていたようだ。



 いや、わたしが今回、この旧作に心惹かれたのは、その後業界を引退した二人の役者、山本清彦(やまきよ)と村上ゆう(青木こずえ)が重要な役を演じているせいではなかったか。やまきよと青木こずえさえいれば、わたしのピンク映画はできる、と確信していた時期がわたしにはあった。
 その後、時期を接して二人が業界を去ったのは皮肉なことだが、代わってメインの役者となる柳東史くんが、カプグラ妄想患者を実に魅力的に演じている。今回の舞台挨拶でも来てくれる佐々木基子さんとは、まだ出会う前のことで、こんな風にわたしは役者を頼りにピンク映画を作ってきた。
 主演は今井恭子さんで、この人には薔薇族映画にも出てもらっている。共演には業界屈指の人気者、風間今日子さん、これまた薔薇族にも出演してもらった真央はじめくん、それに舞台の役者の中村和彦くんなど。いずれもわたしの好きな役者たちだ。
 わたしは役者が好きなのだろう。愛してさえいるかもしれない。彼女や彼のわたしだけが感じとった妙な気配、魅力、セクシーさ、思い込みかもしれないが、それらをスクリーンで陰に陽に展開しようと妄想するところから、わたしのピンク映画作りが始まる。これが嵌れば、わたしには気持ちのいい作品ができるのだが、嵌らないと悲惨な結果になることは見ての通りだ。
 まあ、ひとりよがりの映画です。偏屈者のある時期の記念として、笑って観て頂ければ幸い。



 上野オークラは、上野駅からみると、西郷さんの銅像の先、不忍池のほとりにある。薔薇族映画のメッカ上野世界傑作劇場へ続く小道を抜けると、不忍池の眺望が大きく広がるのだが、この狭い小道が曲者なのだ。不可思議なオーラが漂っている。
 明るい上野公園側の大通りから入っても、しっとりした情景の不忍池側から入っても、この小道に足を踏み入れると、すっと翳が差し、背筋をひんやりしたものが流れる。異界に通じているのではないか。かつては深夜、男娼の立ちんぼが営業していたが、今ではどうなのだろう。
●周辺地図
http://map.yahoo.co.jp/pl?nl=35.42.26.456&el=139.46.34.795&la=1&fi=1&skey=
%C5%EC%B5%FE%C5%D4%C2%E6%C5%EC%B6%E8%BE%E5%
CC%EE2-14-31&sc=1%20




 拙作が終了するのは4時40分なので、飲みだすにはまだ早い。この小道のオーラを充分に堪能した後、不忍池のほとりを散歩しようではありませんか。小道のすぐ先には下町風俗資料館なんていうところもある。趣味のある人にはこたえられないかもしれない。
 そう言えば、不忍池で無許可で撮影していたら、警備にとがめられ、説明に窮した当時助監督の国沢実くん(今回OP祭りにも参加している監督さんだ)が、キャメラマンの持っているカメラを指し、「あれはカメラのように見えるが、実はフィルムが入っていない」という驚くような説明をした。これにはスタッフも警備員も「そんなわけ、ねえだろう!」と大笑いになって、和やかなムードになったが、その後撮影をやめたのか、撮影料を払ったのか、忘れてしまった。



 なお、会津若松の朝火事は、ビルひとつぐらい燃え落ちたのではないかと思ったのだが、翌々日探し回って、ようやくたどり着いたのは、うなぎの寝床のような、二階建ての飲み屋ばかりが入っているバラックだった。屋根や外壁だって燃えた風がない。これであれだけの煙が出たのかと驚いてしまったが、いっぱいある飲み屋のそれぞれで燃えるものが違うので、煙が急に色濃くなったりしたのだろう。現場を前に拍子抜けしてしまった。
 下は、翌日には澄み切った空気のなかに凛然とした雄姿を見せた会津磐梯山。




comment

mamikoさま
おたかさま

 そうですよね。GWの真っ最中に、何が悲しくて上野のピンク映画館でピンク映画を観なければいけないのでしょう。劇場は自信満々のようですが、わたしの友人知人は誰も来ないような気がします。しくしく。
 シオヤマ! 君ぐらい来てくれないか!

  • kuninori55
  • 2008/04/26 11:09 PM

うえーん、3日とは…。近所だし、楽しみにしていたのですが、私も予定があり、観ることができません。残念です。

  • おたか
  • 2008/04/26 11:07 AM

わ〜。3日は用事があって行かれないのです。大宮もいけなかったしすごい残念! なんとか舞台挨拶と1本目だけ見たいけどなあ、、。


  • mamiko
  • 2008/04/26 10:31 AM









trackback