京都・浜野監督特集でお会いした皆さん、ありがとう!

  • 2010.08.01 Sunday
  • 15:07
7月23日から京都・本町館でスタートした浜野佐知監督特集、翌24日から京都シネマでも開始され、もの凄い酷暑の続くなか、それぞれ1週間の上映を終えた。本町館では2日、京都シネマでは連日の日替わりトークショーが行なわれ、多くの皆さんとお会いすることができた。

頭のジリジリ焦げるような陽射しのなか、映画を観に来てくれた皆さん、トークショーのゲストで来てくれた皆さん、飲み会に参加してくれた皆さん、ありがとうございました!
そして、大変なご苦労をおかけした2館の劇場関係者の皆さん、併走してくれた企画発案者の『関西ぴんくりんく』発行人の太田耕耘キ氏に、心からの感謝を捧げます。 


<毎日通って、自宅応接間のように、すっかり馴染んでしまった京都シネマのロビー>

7月30日の最終日は、午後1時55分から『こほろぎ嬢』の上映、そして宝塚市から詩人の寺田操さんを迎えての浜野監督トークショー。これには、わたしも参加した。そしてオーラスが4時15分からの『百合祭』上映。

わたしは久しぶりに35ミリフィルムで『こほろぎ嬢』を観た。このところ、同映画のDVD製作などで、デジタル画面を見ることが多かったのだが、フィルムはやはり素晴らしい。
わたしは脚本を担当しただけでなく、撮影現場で慣れない制作を担当し、実務的な無能力をさらけ出したのだが、それだけに1シーン、1シーンが身に沁みる。

大豚、子豚、2匹の豚の撮影は大変だったが、やっぱり素晴らしい存在感だなあ、などと個人的な感慨にも耽ってしまったが、客観的に見て、わたしたちのチームは悪くない仕事をしたのではないかと、妙に自信を深めた。

初日の、森澤夕子さん(尾崎翠研究者)を迎えてのトークショーでは、こちらを見つめるお客さんのマジマジ顔に、すっかり落ち込んでしまったわたしだが、あの時もその前に、『こほろぎ嬢』を観ておけばよかった。そうすれば自信を持ってトークに臨めたに違いない。

もっとも、自信たっぷりに豚について語る脚本家など、たいがいのお客さんは訝しい思いで見つめていたに違いない。
その点、『都市文学と少女たち―尾崎翠・金子みすゞ・林芙美子を歩く』(04年)『金子みすゞと尾崎翠―1920・30年代の詩人たち』(00年。いずれも京都・白地社刊)という著書を持つ寺田操さんのお話は、尾崎翠の言葉のユニークさを語って、説得力がある。翠におけるフロイトの受容の特異性というご指摘は、とても興味深いものだった。
 


<京都シネマのロビーで、寺田操さんと浜野監督>

とても残念だったのは、掉尾を飾るはずの『百合祭』上映のお客さんが少なかったことで、京都シネマの神谷代表と顔を見合わせ、深く嘆息してしまった。浜野監督特集の最後の番組なのに、なぜ?

映画の興行はつくづく難しいですね。それでも救われたのは、最終日に観に来てくれた『こほろぎ嬢』と『百合祭』の観客の皆さんの多くが、実にニコニコしていたこと。
特に『百合祭』を観た中高年のお客さんの、明るい活気付いた表情を見るのは、製作に関わった人間として幸せを感じる一瞬だ。

期間中に、岡山映画鑑賞会の右遠さんが、差し入れを持って『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』の新編集版を観に来てくれたのには、ビックリした。右遠さんは、京都シネマの会員でもあって、岡山ではかからない映画を片道2時間半かけて観にくるのだという。京都シネマは、関西以西の映画ファンにとって、大切な拠点となっているようだ。

岡山では、浜野監督作品は岡山映画鑑賞会と岡山映画祭の協力で、何度も上映して頂いている。吉行和子さんの生地でもあり、『百合祭』は吉行さんをゲストに迎え、一週間の完成ロードショーを行なったほどだ。

右遠さんは、7月17日から19日まで開かれた「第39回 映画大学in 松山」で、映画『百合子、ダスヴィダーニヤ』の赤い「求む、応援」チラシや、今回の京都での浜野監督特集のチラシを、多くの人が手にとって興味深そうに読んでいたと報告してくれた。

これらのチラシは、福岡映画サークルの野田さんが持ち込んでくれたもの。野田さんは、11月23日(火・祝日)に福岡の「甘棠館(かんとうかん)」というところで、『こほろぎ嬢』の上映会を行なってくれることになっている。そのために今から尾崎翠の読書会をするなど、超人的な努力をしてくれているが、こうした人たちのバックアップに、わたし達は支えられている。

バックアップという点では、大阪・箕面市から大挙して、京都シネマ、本町館の両方に駆けつけ、二度にわたって飲み会に参加してくれた「TEAM ヤミナベ」の諸君にも、衷心から感謝したい。マジな人権問題に取り組みながら、アウトサイダー的なものに熱烈な関心を示す諸君の、若々しいパワーと、旺盛な食欲に、どれほど勇気づけられたか分からない。

こうして幕を下ろした京都の極夏の浜野監督特集だったが、浜野監督やわたしが帰京した昨夕、京都新聞の夕刊に、映画『百合子、ダスヴィダーニヤ』の大きな記事が載った。しかもカラー写真入り! 

特集上映中に掲載された同新聞「大正の着物展 湯浅芳子の時代」(主催:NPO法人京都古布保存会)の記事を書いてくれた森山敦子記者によるもの。

森山記者によれば、京都新聞の記事を検索したところ、湯浅芳子に関する記事は、めぼしいものがほとんどなかったという。今回の記事は、わたしたちにとって浜野監督特集の、これこそ掉尾を飾った嬉しい記事だったが、しかし映画撮影の範疇を越えて、京都における湯浅芳子の再評価のきっかけとなるべきものではないだろうか。

実にさまざまな出会いに恵まれた、京都2館・浜野佐知監督特集だった。

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