2017/04

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思わず息を呑んだ。桧枝岐村の「燧の湯」(ひうちのゆ)に愛車カブで温泉入りに行った帰りのこと。暗くなった高所の山道を対向車がまったくない状態で急いでいたら、木賊(とくさ)温泉から湯の花温泉に抜ける山道の、いつも通る唐沢トンネルが青白く浮かび上がっている。真っ暗な山の中で、あの穴の中に思わず魅入られたように入って行ったら、いったいどんな世界に通じているのだろう、と思わせるような光景だった。

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あまりに「燧の湯」が気持ちよかったので、長居しすぎた。気づいたら日は暮れかけている。わが旧舘岩村に帰るには、木賊温泉経由で大きな山を二つ越える山間コースと、檜枝岐川沿いに国道を走る平地のコースがある。後者はいくらか回り道になるが、どちらを選ぶかバイクで走り出しても迷っていた。
山の中の街頭もない道は、夜間真っ暗闇になるのではないか。夏にスーパーカブ(但し110cc)を買って以来、夜に走ったことは一度もない。不安はあったが、岐路の直前で、多分に怖いもの見たさだろう、山間コースにハンドルを切る。
昼間でさえ1時間近く走って対向車1〜2台、たまに山菜盗掘らしき車が止まってるだけなので、宵闇になったらまったく無人の境。体はひどく冷えるが、まるでわたし専用バイクレーンのようじゃないか。などと気を良くしていたら、いつものトンネルが常ならざる様相で出現した。

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慌ててブレーキをかけ停車。肩から下げたバックのカメラを取り出す。夢中で撮って一息ついたら、どこからか人の声が聞こえた(ような気がした)。周りを見るが、誰一人いない山の中。先日は雪も降ったらしいこの山の中に、目下わたし以外の人間がいるだろうか。かなりの確率で誰もいない。
空は明るいが、山並みは真っ暗。一人で周囲を見渡しているチッポケな自分。そこに再び暗い山の中から、一人か二人、女の人の声。くすくす笑っているようでもある。わたしは全身ぞっとして慌ててカメラをしまい、エンジンをかけた。
ずっとジェット型ヘルメットの風を切る雑音に慣れた耳が、バイクを降りて、あまりに静かすぎるところに自分を発見したための空耳? 怖かったな。

P.S.  その後、黄昏は逢魔が刻、なんて言葉を思い出した。今でも怖い。


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