温泉膏肓に入る

  • 2010.11.18 Thursday
  • 04:30
 「病膏肓に入る」は、てっきり「やまい、こうもうにいる」だと思っていたら「やまい、こうこうにいる」の誤読だという。そういえば、ずいぶん以前、そんな指摘を読んだことがあったが、すっかり忘れていた。
「膏肓」というのは、体の奥深いところ、という意味があるらしい。それならわたしの南会津・地元温泉めぐりにはピッタリではないか。

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鄙びた、というか寂れたというか、橋の正面にあるのがわたしのホームグラウンド、湯ノ花温泉の共同浴場「湯端の湯」。この温泉には四つの共同浴場があり、200円の入浴券を買えば、何カ所でもハシゴOKという大盤振る舞いだ。
といっても、最近増えている日帰り温泉を期待してもらっては困る。4カ所の中には、熱い湯はあっても、水道がぽたぽた垂れるだけの「天神の湯」などもあり、いずれもそれほど大きな湯船ではない。

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「湯端の湯」の裏山右手にあるのが温泉神社。この共同浴場は男女の別以外に、地元部落のための浴槽がもう一つある。男湯の場合、上がり湯(温泉)と水(沢の水)の蛇口が一つずつしかないが、この源泉を引いている「弘法の湯」はお湯と水(水道)の出る蛇口が二つある。ロッカーもあって、一般的には使いやすい。
わたしは普段、民宿のお客などが入りにくる夕方過ぎの時間帯を避け、4時頃からのんびり湯に浸かっているのだが、先週の土曜日だけ植物の雪囲いをしていて遅れてしまった。すると「湯端の湯」は着替えして帰ろうとしている人が3人、浴槽に4人いて、もう満杯状態。
そこで、あまり外部の人が来ない、湯ノ岐川の渓流に降りたところにある「石湯」に向かった。ここは狭い混浴で、大きな岩の間から熱い温泉が湧き出す。上がり湯はないが、水道はある。しかし、どういうことだろう、すでに3人の男性客が入っていて、もういっぱい。
こんな日がなければ、わが湯ノ花温泉の未来もないだろうと自らを慰め、今度は橋のたもとを降りたところにある小さな「天神の湯」に向かった。ここも混浴だが、鍵がかかるようになっていて、地元の老婦人が入っていることが多い。わたしが行ったら、ちょうど老婦が出るところだった。
不審がられて、どこから来たのか聞かれる。実はここで生まれたのだというと、目を丸くされたが、名乗ったらわたしの父母を知っていて、和やかな会話となった。
「天神の湯」もまた、そうとう熱い温泉だが、いつからか水が出ないままになっていて、蛇口から滴り落ちるのを洗面器に溜めている。上がり湯も水もない原初的な温泉だが、わたしは一工夫してパイプから流れ出るお湯を二つの洗面器に入れ、それを自然に冷ますことにした。それでも熱いので、水の洗面器からちょっと加えて、頭と顔を洗った。
そのうち民宿の客らしき男性3人が入って来たら、もう湯船に入りきれない。わざわざこのお湯に入りにくる通のお客もいるのだと感心する。彼らは体を流さず、温まったら帰って行った。引き続き一人で入っていたら、やはり地元の老婦人がやってきて、後どれぐらい入っているか、詰問調で聞かれる。ちょうど出ようとしているところだったので、ちょっと待ってもらったが、入れ替わりの時に、やはりどこから来たのか尋ねられる。ここでも父母の話をして、和やかな別れとなった。

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湯ノ花温泉より、さらに秘境の温泉として知られるのが、山を越えたところにある木賊(とくさ)温泉。ここには2カ所の共同浴場があり、上のバラックみたいな「岩風呂」が千年ぐらいの歴史があるらしい。
つげ義春の漫画に出て来た、というウロ覚えの紹介を受け売りして来た。が、今回検索してみたら、昭和の頃の、茅葺き屋根の木賊温泉風景が一枚スケッチされているだけ。マンガ「会津の釣り宿」には最後に「これから木賊温泉に向かう」とのみ記されているとか。有名な「二岐渓谷」は、同じ福島県でも天栄村だ。
しかし、この硫黄の匂いがぷんぷんする「岩風呂」は、いかにもつげさん好みという佇まい。渓流の河原につながった岩風呂と、浴槽に面した着替え棚があるだけで、内からも外からも丸見え。一応混浴だが、女の人は入りにくいだろう。
水も上がり湯もない。何度も大水に流され、その度に再建されて来たとか。頭を洗うには上がり湯の欲しいわたしだが、ここのお客たちは湯治客みたいに何度もお湯に浸かるだけで、あまり体を洗ったりしないようだ。
木賊温泉には、もう一つ共同浴場「広瀬の湯」があり、こちらは男女別で上がり湯もある。わたしはまず硫黄の匂いがぷんぷんする「岩風呂」に入り、熱くなった体を渓流に面した岩のうえに出て冷ますことを何度か繰り返した後、「広瀬の湯」にハシゴして体を洗う作戦を立てた。岩風呂200円、広瀬の湯300円。よくある日帰り温泉500円と見合うではないか。
浴場から河原に出たところにある大きな岩の上に裸で座っていると、空気は冷たいが火照った体に気持ちいい。向こうの旅館から丸見えだが、こういう状況ではまるで気にならない。

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これが共同浴場「広瀬の湯」。男女別で、水は出ないが硫黄臭い温泉のお湯が蛇口から出てくる。浴槽は広く、お湯は「岩風呂」よりぬるめだが、とても穏やかで気持ちがよい。熱い温泉が好きなわたしには珍しく、心地よく思われた。

これから一眠りした後、帰京するが、10日間の滞在中、9日温泉に行った。メインの「湯端の湯」以外に、同じ湯ノ花温泉の「天神の湯」、木賊温泉の「岩風呂」と「広瀬の湯」、そして時間が遅くなったので写真が撮れなかった桧枝岐村の「燧(ひうち)の湯」。
ここは立派な日帰り温泉の施設ながら、源泉掛け流しの室内風呂と露天風呂がある。お湯も水も出て500円。高台にあり、露天風呂の目の前には会津駒ヶ岳(多分)が聳えるという絶好のロケーションだ。
今回は入れなかったが、桧枝岐村にはもう一つ「駒の湯」(500円)という共同浴場、さらに「アルザ尾瀬の郷」という温水プールも備えた総合温泉施設(入浴だけなら割引値段の500円)もあるが、源泉掛け流しは「燧の湯」だけのようだ。
しかし「アルザ尾瀬の郷」の、白樺の林に続く広い露天風呂は非常に気持ちがよい。どうもわが旧舘岩村より、桧枝岐村はそうとうリッチなようだ。農協のスーパーもあって、わたしは今回、老父と自分の二人分の食事を作るため、肉や卵を仕入れて来た。バイクの荷台のボックスに卵を入れたら、2個ほど殻が小さく割れていたのは失敗だったが。

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